第7回当事者研究会の様子


午前の部

 

午前の部 は、2人の方の当事者研究を行いました。

 

まず前半は、ピアリンク代表である柳さんの当事者研究発表です。

柳さんと同じ立場である当事者スタッフの同僚との関係を通して、うつ病が発症した事についての研究発表です。

 

 

柳さんの自己病名は「感情音痴自己否定全力疾走病」です。
ネガティブな気持ちに気が付かず、がんばりすぎるためにうつ病になるようです。

   

最初、柳さんは華蔵寺クリニック・ファーブラに患者として通い始め、現在は当事者スタッフとして勤務しています。

 

ファーブラで当事者研究を行い、ここ2~3年はうつの症状が出ず安定していました。

しかし、同僚との出来事をきっかけとして、うつの症状が出てしまいました。

 

その同僚は、柳さんとのをきっかけに欠勤をするようになります。

 

最初はあった休みの連絡メールも無くなり、心配して柳さんがアパートを訪ねても出て来ないという状況になってしまいます。

 

同僚を心配する気持ちはありましたが、こういう苦労している時にこそ「弱さの情報公開が必要だ。」と思っていたため、弱さの情報公開をしない同僚に対するイライラ感も湧いてきていました。

 

 

この時、自分の苦労と同僚の苦労が一緒になってしまっていました。

 

そのため、柳さんは「このままではマズイ…。」と思い、自分と同僚の苦労の仕分けを行って自分助けをしました。

 

「上手く対処できた。これで大丈夫だ。」と思っていたのですが、徐々にうつの症状(過眠)が出てきてしまいました。

 

柳さんには、自分が辛くなるとうつ病がその辛さを教えてくれるというメカニズムがあるそうです。

 

その事から振り返ってみると、4つの気付きがありました。

 

1:良い支援者になろうとしているのに現実は何も出来ないで失望している事

2:他の同僚に迷惑をかけてしまっているのではないかという思い

3:自分のような当事者スタッフの苦労は、他の同僚(健常者)には

  解ってもらえないという思い込み

4:もっと当事者研究・情報公開した方が良い

 

この気付きは、自分1人だけで気づけた訳ではなく、情報公開によってみんなから気付かせてもらえたそうです。

 

 また、柳さんが具合が悪くなる事で、「柳さんでもうつになるのが分かって安心した」や「弱さの情報公開の方法が分かった」などデイケアのメンバーに対して意外な良い効果もあったようです。

 

多くの支援者の前で宣言するのは心苦しいとの事でしたが、下記の宣言で研究発表を終わりました。


「私は自分の弱さを大切にして、立派な支援者になる事を放棄します」

 

これは、「何事にも動じずテキパキと仕事をこなす立派な支援者には憧れがあるが、自分には出来そうにないし出来ない」という思いからの宣言でした。

 

 

午前の後半は、病院に勤務しているSさんの当事者研究を行いました。

 

「病院で当事者研究したい」がテーマです。

 

ワーカーとして働き始めて1年で「まだ何も出来ていない」という思いがあるそうです。

 

当事者研究に魅力を感じていて、「退院したいと思っている患者さんの助けになれたら」と思い、病院で当事者研究を始めるためにテーマを出してくれました。

 

現在、Sさんの病院では、月2回SSTを行っています。ただし、あらかじめテーマを決めて行うSSTだそうです。

過去に一度だけオーソドックスなSSTをSさんの提案で試みたのですが、上手くいかず看護師さんからの受けが悪くて断念したそうです。

 

今回の当事者研究で、以下のような案が出ました。

 

一つ目は、医師や看護師長にべてる式当事者研究やSSTのエビデンス(論拠)を示して上層部から変革していくというものでした。

 

二つ目は、普段から病棟での雑談と個別面談から患者さんのテーマを吸い上げておき、勉強会などでその情報をスタッフ同士で共有しておきます。そして、それらの情報を月2回のSSTと他のプログラムに反映させるというものでした。

  

他には「病棟でべてるのビデオを見る」や「同好会からスタートさせる」という意見も出ました。

 

Sさんの病院以外の施設の方も、新しくプログラムを始めるのには苦労しているようです。


普段、当事者研究に親しんでいるピアリンクスタッフも支援者視点の当事者研究は初めてで興味深く聞けました。

 

 

午後の部

 

午後の部も2人の方が発表・当事者研究をしてくださいました。

 

まず最初は、ピアリンクスタッフ・りかさんのべてるの家滞在記の発表

です。

 

約2週間の滞在で多くの事をお土産として持ってきてくれました。

 

 
りかさんは今まで多くの幻聴さんに苦労していましたが、浦河の地に着いた途端に不思議と激減したそうです。


現地では、積極的に当事者研究・SST・SA・WAなど多くのプログラムに参加し、昆布作業にも加わってきました。

その昆布作業では、多くのメンバーと交流を深めてきたようです。

 

りかさんは、みんなが昆布作業を一生懸命頑張っている姿と一人ひとりの笑顔がとても素晴らしく、そして印象的だったそうです。


べてるの生活の中では、同じサトラレ系の清水里香さんや吉野雅子さんなどのメンバーとの交流を通して、「自分の苦労や病気を分かってもらえた」という感動の毎日だったようです。

 

 

今まで苦しんできた幻聴さんに「幻聴さんありがとう」と言えるまでになったそうです。

 

りかさんは、感動一杯のべてる生活やその空気をピアリンクに持ちこんでくれました。

 

 

後半は、Hさんの研究でした。

りかさんの発表に勇気をもらって、テーマを出してくれました。 

 

Hさんは、病気になってから上手く会話をすることが困難になったそうです。

 

Hさんには 、3つの苦労があるそうです。

1:上手く話す事が出来ない

2:上手く聞き取ることができない

3:調子が悪くなると言葉の一音一音に責められている感覚がある


そこで、ここまでのHさんが上手く話せているかを参加者全員に聞いてみました。

すると、参加者全員が「上手く話せている」という回答でした。Hさんは、自分の想像とは逆の答えにとても「びっくり」していました。

 

自分では上手く話せない・聞き取れないと思っているHさんの助け方は、メールや手紙だそうです。 会話は不得意だけど、文章は得意という事でこのような自分に合った素晴らしい助け方をしているそうです。

 

参加者から色々なアイデアをもらったHさんは、これからは長くゆっくり付き合える仲間を見つけて会話に自信をつけていきたいという事でした。

 

一緒に来ていたお母さんも、応援してくれる会場の参加者に涙ぐみながら感謝の言葉を伝えてくれました。

 

 

 

みなさんも自分の苦労を語りに来ませんか?

ピアリンクに参加している仲間とともに、新しい自分助けの方法を探していきましょう。

 

興味がありましたら、お気軽に参加してみてください。